胃癌

がんの中で胃癌の罹患率(病気にかかる割合)は日本人男性では第一位、女性でも乳癌・大腸癌に次いで第三位です。死亡率(胃癌で亡くなる患者さんの数)が減少してきたために『減ってきた』と勘違いされていますが、まだまだ一番多いがんであることに変わりはありません。

症状・検査

症状

早期の胃癌に症状はほとんどありません。併存する胃炎や胃潰瘍による症状で内視鏡検査を受けられた際に、または健康診断で偶然発見される方がほとんどです。

進行胃癌による症状は腫瘍ができた部位により若干異なります。
胃の出口近くに大きな胃癌ができていると、胃に入った食べ物が腸の方に流れなくなり、いつもおなかが張った状態であったり、食べたものをもどしたりするようになります。
入り口に近い部分の胃癌では食べものがつかえてうまく食べられないなどの症状が出てきます。
胃は比較的太い管状の臓器なので、胃癌が胃の途中にできるとなかなか症状が出にくく、みぞおちの辺りが重苦しい程度の症状しか無いのに癌はかなり進んでいらっしゃる方も少なくありません。
胃癌から出血して血を吐いたり、便が黒くなって内視鏡検査を受けて、胃癌が発見される患者さんもいらっしゃいます。

検査

胃癌の診断は内視鏡による検査が基本です。内視鏡で胃の内側から粘膜を観察して、怪しい部分の組織を一部採取し、顕微鏡で見る検査(病理検査といいます)をして確定します。内視鏡は以前に比べて改良されてきており、検査を受けられる患者さんの体の負担も軽くなってきています。
なお、胃癌があるというだけでは治療の方針の決定ができませんので、ご紹介くださった先生のところで内視鏡検査を受けた患者さんも、当院で再度内視鏡検査を当院で受けて頂くことが多いことをご了承ください。

さらに、周りのリンパ節へ飛び火(リンパ節転移といいます)していないか、血の流れに乗って遠くに飛び火していないか(血行性転移といい、肝臓や肺などに転移を起こします)、あるいはおなかの中にがん細胞が散らばっていないか(腹膜播種)などを見極める必要があります。
現在ではCTという体の断層をみるレントゲン検査の精度が向上して手術前にかなり正確に患者さんの胃癌の進み具合がわかるようになって来ています。

その他、超音波内視鏡検査、バリウム検査、血液検査などを行うことがあります。

治療方針

当院での胃癌の治療は基本的に日本胃癌学会の提示するガイドラインに従って行います。胃癌以外の様々な病気(心臓病や肺の病気、重症の糖尿病など)をお持ちの患者さんでは、病気の進み具合と患者さんの全身状態のバランスを考えて、治療方法の選択肢を提示させて頂きます。

内視鏡治療

胃カメラによる治療です。早期胃癌で転移の可能性のきわめて低い患者さんに行います。取り除いた胃癌を病理検査で十分検討した後、追加の手術が必要になる事もあります。当院では消化器内科が行います。

腹腔鏡手術

現在では医学の進歩により早期の胃癌はほぼ治るようになりました。そこで手術による後遺症を出来るだけ少なくして胃癌が治った後の生活の質を向上させる努力が行われています。
 腹腔鏡手術とは腹壁に小さな穴を開けそこからカメラを挿入しのぞきながらマジックハンドのような機械を使い手術を行います。この方法は開腹手術に比べ体への侵襲が少ないと言われており、早期回復できることや手術後の痛みが少ないなどの利点があります。ただし手術は難しくなり手術時間も長くなります。早期胃癌の患者さんには通常の開腹手術以外に腹腔鏡手術も選択して頂けます。

開腹手術

一般的な手術のことです。胃癌の標準的な手術治療は胃の2/3以上の切除及び第2群までのリンパ節切除を行うものです。ガイドラインでは定型手術と位置づけられております。胃の出口の方の2/3を切除する幽門側胃切除術や胃を全部切除する胃全摘術があります。場合によっては胃の入り口の方を切除する噴門側胃切除術なども行います。また他にもガイドラインに従い早期の胃癌に対しては縮小手術を行っております。縮小手術には病巣のみを切除する局所切除や胃の出口を残す幽門保存胃切除術があります。
 癌が周囲臓器(膵臓や大腸などが多い)に浸潤しているなど極度に進行していた場合、それらの臓器とも一緒に切除することで癌をすべて切除できると判断された場合には合併切除を行います。これらは拡大手術と呼ばれています。
 そのほかに残念ながら進行癌で手術では胃癌を切除しきれない場合には食事ができるように胃と小腸をつなぐバイパス術や癌からの出血で貧血とならないように胃のみを切除する単純胃全摘などがあります。

化学療法

胃癌の進行程度や患者さんの全身状態のために根治手術が不可能なときに行なう、抗癌剤による治療です。病気の進行程度によっては手術前に抗癌剤を使用したり(術前化学療法)、進行癌の根治手術後に使用したりします(術後補助化学療法)。ある程度進行した胃癌の患者さんに手術をして術後補助化学療法を行なうと生存率が1割上昇することが報告されており、当科でも進行癌の手術後には薬(内服薬)の治療をお勧めしています。

当科の取り組み

なるべく胃は残す

胃全摘は手術の後の食事摂取が少なくなり、体重が大きく減ることが多いです。当科では、なるべく胃を大きく残す手術として幽門保存胃切除術(胃の真ん中1/3を切除する手術)や、噴門側胃切除術(胃の上側1/2を切除する手術)を積極的に行っております。年齢や基礎疾患などを考慮して、胃癌の部分だけを部分的に切除(局所切除)を行うこともあります。
ただし、胃癌をしっかり取り切るために場合によっては胃全摘をおすすめすることもあります。ガイドラインに則った標準治療をベースにしながら、それぞれの患者さんにあった術式を検討しています。

腫瘍内科と連携した化学療法

化学療法は、当院では腹腔内化学療法を積極的に行っております。胃癌は腹腔内に散らばるような転移(腹膜播種)を起こすことが多く、それにより腸閉塞などの症状を起こすことがあります。このような腹膜播種に対する治療として、腹腔内に抗がん剤を注入し腹膜播種に直接抗がん剤を行き渡らせます。臨床試験あるいは自由診療での治療になりますので、ご不明な点があればお問い合わせください。
当科には腫瘍内科医も所属しており、化学療法の選択にあたっては適宜内科とカンファレンスで相談しながら行っております。

ロボット支援下胃切除術

手術のやり方として、左記の腹腔鏡手術、開腹手術に加え、手術支援ロボットを用いた手術も行っています。ロボットによる胃切除は、腹腔鏡手術と同様に小さい創で行うことができ、かつ腹腔鏡手術に比べ手術後の合併症を少なくすることが期待されています。

FAQ

手術のための入院期間はどのくらいでしょうか?

通常は約2週間程度です

手術後にゴルフやテニスをすることは可能ですか?

治術後2-3月で社会復帰する頃にゴルフ、テニスなどの運動の再開をおすすめしています

傷の小さい手術は行ってますか?

はい。腹腔鏡下手術やロボット支援下手術を行っています

外来診察のご予約

☎03-5800-8630

※乳腺内分泌外科の診療は完全予約制です。

詳しい予約方法について(東大病院へ)