食道癌

食道癌の治療方針や手術などについて、解説をします

検査

食道癌の診断は、内視鏡検査の際に腫瘍(しこり)から採取された組織を顕微鏡で調べ、癌細胞が確認されて初めて確定診断となります。バリウムによる透視や内視鏡(胃カメラ)による肉眼的観察(見た目)だけでは癌の疑いにとどまります。よって、診断のためには組織検査(生検)が必要となります。

治療法を選択するにあたっては、組織検査だけではなく、進行度(癌の進み具合)を調べる検査も必要となります。後述しますが、進行度によって、治療法が異なりますので、内視鏡検査以外に、転移の有無などを調べるために、CT(computed tomography)は必須の検査となっています。

治療を開始するにあたっては、癌に対する検査だけではなく、心機能、呼吸機能、肝機能、腎機能などの全身状態の把握も必要になります。その状況によっては、標準治療を行えない場合もあります。

治療方針

食道癌に対する治療法としては、我々が専門に行っている外科手術以外に、内視鏡治療、放射線照射、化学療法(抗がん剤)などがあります。進行度によって、使い分けられます。図(食道がん治療のアルゴリズム)をご参照ください。それぞれの治療法を組み合わせて行う集学的治療も他科と協力して、積極的に行っています。

進行度(Stage)は癌取扱い規約によりO,I,II,III,IVa,bに分けられていて、癌が進むに従って、進行度も大きくなります。進行度は癌の深さ(深達度:T)、リンパ節転移の程度(N)、および遠隔転移の有無(M)によって決まります。すべて程度が進むにしたがい数字も大きくなります。それらを組み合わせてStageが判定されます。

最終的には手術で切除された標本(取り出された検体)を顕微鏡で詳しく調べて、はじめて確定されます。治療開始前のStage判定は、あくまでも内視鏡やCT検査にもとづく推測です。切除して、それを顕微鏡で調べて、初めて癌の深さや転移の有無はわかるのです。

手術

食道癌手術は消化器外科領域でもっとも大きな手術のひとつです。時間もおよそ7-8時間かかります。
それは、食道癌のほかの癌にはない特殊性からくるものです。食道はのどと胃をつなぐ臓器ですが、実は背中側(背骨の前)に位置しています。これがもっとも他の臓器と異なる点です。食道の前方には心臓や気管があり、左右には肺が位置しています。また、一番前方には胸骨があり、食道をとりだすためには、前方からは到達できません。通常は、右胸(わき)から到達します。

手術は切開、食道切除、リンパ節郭清、再建(食べ物の通り道を作りなおすこと)の4つで構成されています。
リンパ節郭清とは、癌が転移しやすい場所にあるリンパ節をとってくることです。食道癌の特徴として、胸の中の癌周囲だけではなく、頸部(声帯を司る反回神経沿い)や腹部(胃の周囲)のリンパ節にも転移しやすいことが知られています。ですので、リンパ節郭清は頸部・胸部・腹部の3領域に及ぶ手術が標準的となっています。
再建は通常、胃を細長く管状にして(胃管といいます)、頸部まで挙上して、食道とつなげる(吻合)方法がもっとも一般的となっています。

術後合併症としては、肺炎、出血、縫合不全(吻合がうまくくっつかないこと)、反回神経まひ(声がだしにくい、あるいはしゃがれてしまう)などが起こりえます。

順調に経過した場合、術後約3週間弱で退院となります。

当科の取り組み

当科では、リンパ節に転移している食道癌には手術前に抗がん剤治療を行ってから手術を行います。抗がん剤治療は、ドセタキセル、シスプラチン、5-FUという3種類を組み合わせて投与します。現在の標準治療であるシスプラチン、5-FUの2種類の組み合わせに比べて、より高率にがんを縮小させることができます。

手術では、右胸を経由しない「縦隔アプローチ手術」を手術支援ロボットを用いて積極的に行っていることが特徴です。頸部と腹部から、食道の全周をトンネル工事するように切除するようなイメージとなります。
この方法では右胸に創ができないため、手術後の痛みが軽減されます。また、従来の方法と異なり肺を圧迫せずに手術ができるため、手術のあとの肺炎を減らすことができます。 また肺の機能の弱い方、肺の手術の既往がある方でも安全に手術をすることができます。

このように、当科では手術前のより協力な抗がん剤と体にやさしい手術を組み合わせることによって治療成績をあげ、かつ手術のあとの生活の質を落とさないよう工夫しております。ご興味があればぜひお問い合わせください。

鏡視下手術(非開胸食道亜全摘)

ロボット支援下手術

術後の傷

鏡視下手術やロボット支援下手術を行うことで、従来の開胸手術のような傷(左)を残さず、右のような小さな傷あとのみにできるようになりました。

FAQ

手術のための入院期間はどのくらいでしょうか?

通常は約3週間程度です

手術後にゴルフやテニスをすることは可能ですか?

治術後2-3月で社会復帰する頃にゴルフ、テニスなどの運動の再開をおすすめしています

傷の小さい手術は行ってますか?

はい。早期癌、進行癌に対しても、ロボット支援下縦隔アプローチ手術を行い、患者さんの負担を小さくするようにしています。

外来診察のご予約

☎03-5800-8630

※乳腺内分泌外科の診療は完全予約制です。

詳しい予約方法について(東大病院へ)